コラム 「 スポーツがもつ社会相互作用の重要性 」(協会顧問 長野崇氏)

本日はキッズアンドジュニアスポーツコンディショニング協会、長野崇氏にコラムを執筆いただきました。
【経歴】
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士後期課程修了。サンフレッチェ広島、
ヴィッセル神戸ユースチーム監督・コーチを歴任したのち、大原学園神戸校教員、
神戸大学発達科学部非常勤講師から現在は大阪国際大学人間科学部講師となる。

 

「 スポーツがもつ社会相互作用の重要性 」

大阪国際大学
長野 崇

 

余暇の身体活動やスポーツの種類による違いが、
平均余命の長さにどのように影響するかについて調査した、
Copenhagen City Heart Study(CCHS)の結果から、
スポーツの種類によって平均余命の延長年数に、
大きな差があることが報告されました
(Mayo Clinic Proceedings誌オンライン版;2018年9月4日号)。

なかでも、社会的相互作用の大きいスポーツのほうが、
より平均余命が延長することが示唆されています。

座りがちなライフスタイルの人たちと比べた平均余命の延長(多変量調整後)は、
テニスが9.7年、バドミントンが6.2年、サッカーが4.7年、
サイクリングが3.7年、水泳が3.4年、ジョギングが3.2年、
徒手体操が3.1年、スポーツクラブのアクティビティーが1.5年でありました。

杉原(2003)によると、運動が好きになるきっかけは、
「能力」、「面白さ」、「対人的交流」、
高田(1976)は子どもが好む体育授業は、
「快適な運動」、「技術の伸長」、「明るい交友」、「新しい発見」としており、
両者ともに交流」を挙げています。
社会的相互作用という指導者や友人との関わりの楽しさが、
運動への興味や残りの人生の長さにまで影響を与えるとはびっくりですね。

現代の子どもたちの行動傾向や成長上の課題として、
「個人化」、「自閉化」の傾向があると考えらます。

これは、家族や仲間といった社会集団の基礎単位における関わりを低下させ、
その場で生じる集団内の役割や責任を放棄し、
個人的で個別的な範囲内でのみ生きようとすることを指します。
また、それは相互の関わりで得られる共感や葛藤などを知らず、
自己の存在価値を確認する場を喪失してしまうことを意味しています。

1)幼少期の特徴である自己中心性の未解決、

2)コミュニケーション能力の未発達

3)自己管理や他者への未理解

4)規範意識や社会への帰属感の皆無

これらは、幼く未成熟な大人たちが社会にあふれることになると、
警笛を鳴らす必要があります。

 

従来、自然にこれらの能力を磨く場として存在した家庭や地域社会の教育力が低下し、
部活動や集団活動への参加が低下するなどにより、
若者の間でこのような基礎的能力のばらつきが拡大していると考えられます。
また、そのような能力と学力との関係性が弱くなってきていることが考えられます。
これらの状況が、学校現場で見られる行動の個人化、自閉化の傾向など、
子どもたちの成長上の課題は克服されぬまま、自立の達成は遠のき、
人間形成の遅れを生み出していることは容易に理解できますね。

 

このような発達課題の未消化は、大学を卒業し就職する年代の若者にも波及しています。
自己都合退職者に共通する行動傾向として、以下の分析がなされています。

1)指示待ち傾向が強く、マニュアルに頼り切る傾向、

2)コミュニケーションが円滑でなく、周囲から浮き上がる傾向、

3)周囲の者から一緒に仕事をしたくないという感情をもたれやすい傾向、

等が挙げられ社会問題といっても過言ではありません。

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」といった
社会相互作用を通じた「社会人基礎力」の養成は、我が国の最重要課題といえるのではないでしょうか。

今後、スポーツ、家庭、親子関係が育む社会相互作用は、益々重要となることは間違いないといえますね…

 

【参考文献】

1)Copenhagen City Heart Study(CCHS)、Mayo Clinic Proceedings誌オンライン版;2018
2)杉原隆.『新版運動指導の心理学』運動学習とモチベーションからの接近.東京:大修館書店;2003
3)高田典衛.体育授業入門.東京:大修館書店;1976.
4)近藤昭一「子どもの危機と学校組織」教育出版;2012

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長野 崇

この記事を書いた人: 長野 崇

順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士後期課程修了。サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸ユースチーム監督・コーチを歴任したのち、大原学園神戸校教員、神戸大学発達科学部非常勤講師から現在は大阪国際大学人間科学部講師となる。

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