野球スポーツ障害  野球肘 「上腕骨(じょうわんこつ)内側上顆裂離(ないそくじょうかれつり)(肘内側障害)」

野球肘 「上腕骨(じょうわんこつ)内側上顆裂離(ないそくじょうかれつり)(肘内側障害)」

概要

野球に多いスポーツ障害(=スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害のこと)の1つに野球肘があります。

 

野球肘とは“野球選手に起こる肘障害の総称のことで、障害部位により肘内側障害、外側障害、後方障害”1)の3つに大きく分けられます。

 

今回は肘内側障害のうち、“上腕骨内側上顆下端の分離・分節注1)は成長期野球競技者おいて最も罹患率注2)

高い肘関節障害である”2)とされている上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)について

 

・上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)とは

・上腕骨内側上顆裂離が起こる原因

・上腕骨内側上顆裂離が起こるメカニズム

・肘内側障害注3)を見逃さないためのセルフチェックの方法

・上腕骨内側上顆裂離(肘内側障害)を防ぐために

 

という5つの項目について書いてみようと思います。

 

注1)分節:一続きになっている全体をいくつかの部分に分けること。また、その分けられた部分。

注2)罹患率:ある特定の集団のなかで、一定期間に新たに病気にかかった人の割合のことです。

注3)肘内側障害:肘の内側に痛みの出る野球肘のことで、内側型野球肘ともいいます。

原因

1.上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)とは

投球の際、肘には外反の力(肘の内側が引き伸ばされるような力)が繰り返しかかることで、柔らかく弱い骨軟骨が靭帯に引っ張られ剥がれてしまうことがあります。これをリトルリーグ肘注4)といい、野球少年の肘痛の原因として最も多い障害です。ボールを投げる動作で肘の内側に痛みを感じるだけでなく、肘が十分に伸びきらなくなることもあります3)

注4)リトルリーグ肘:“内側上顆骨端線離開、内側上顆裂離(内側上顆下端剥離骨折)、内側上顆下端の分節化

が含まれています。“4)

野球スポーツ障害  野球肘 「上腕骨(じょうわんこつ)内側上顆裂離(ないそくじょうかれつり)(肘内側障害)」図1:投球のときに肘関節周囲にかかる力


2.上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)が起こる原因

ボールの投げすぎにより、肘の内側に外反の力(肘の内側が引き伸ばされるような力)がかかり続ける

からです。

肘の骨のX線写真(図2)を見てみると、内側に内側上顆(ないそくじょうか)と呼ばれる大きな突起が

あります。この突起に内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)という靭帯が付着しています。

小学生の肘には、内側上顆(ないそくじょうか)のさらに内側に骨端線(こったんせん)と呼ばれる骨の成長を司る軟骨の層があります。
投球動作で腕を挙げてから力を入れるとき、指を曲げる筋肉の延長にある内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)により内側上顆(ないそくじょうか)が強く引っ張られます。

投げる動作を繰り返すことによって、内側上顆(ないそくじょうか)の靭帯付着部が剥がれてしまう4)注5)ことが原因とされています。

野球スポーツ障害  野球肘 「上腕骨(じょうわんこつ)内側上顆裂離(ないそくじょうかれつり)(肘内側障害)」

図1:投球のときに肘関節周囲にかかる力

 

注5)剥離骨折:靭帯や筋肉、腱が急激に収縮することに伴って、骨がはがれ落ちてしまう骨折を指します。正式には「裂離(れつり)骨折」と呼称されますが、「剥離(はくり)骨折」という呼び方が一般的です5)

 

3.上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)(肘内側障害)が起こるメカニズム

図3は1連の投球動作を5つに分けたものです。

この5つの動作のうち、赤枠の部分の動作で“肩関節外転位の状態で、限界可動域まで肩関節が外旋し、その動作に伴って肘関節には外反の力(肘の内側が引き伸ばされるような力)が加わります。

この外反の力が過剰にかかることが上腕骨内側上顆裂離を引き起こす” 6)要因の1つではないかと考えられています。

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図3:投球動作

 

4.肘内側障害を見逃さないためのセルフチェックの方法

手順1:肘の内側の骨の出っ張り(=内側上顆)を探します。

手順2:この出っ張り部分(=内側上顆)に親指を置きます。

手順3:この出っ張り(=内側上顆)から少しだけ手首に近い方向に親指をずらします。

手順4:手順3の部分を親指で押してみて痛みがあるかどうかをチェックします。

手順5:左右両方の肘をチェックし、痛みの左右差の有無を調べます。

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図4:肘内側障害のセルフチェック方法

 

 

 

予防と治療

5.上腕骨内側上顆裂離(じょうわんこつないそくじょうかれつり)(肘内側障害)を防ぐために

上腕骨内側上顆裂離は前述させていただいたように肩関節外転位の状態で、限界可動域まで肩関節が外旋

するときに肘にかかる外反の力(肘の内側が引き伸ばされるような力)が肘関節に過剰にかかることで引き起こされるのではないかと考えられています。

投球動作において肩関節が最大外旋位付近で問題となる動作の代表例として“肘下がり”(図5)が挙げられます。

肘下がりとは図3の赤枠の動作のときに両肩のラインよりも肘の高さが下がるフォームのことをいいます。“7)

通常の投球動作における筋活動では、図3の赤枠の動作のとき肩甲骨周囲の筋活動は前鋸筋の活動が最大

となり、図3の青枠では前鋸筋に加え、菱形筋と僧帽筋下部の筋活動が増大します。また、股関節周囲筋の活動については大殿筋および内転筋機能が重要となります。特に軸足の大殿筋の筋活動が大きいほど、肩関節外旋時の骨盤回旋角度が大きいとしている報告があります。さらに軸足内転筋の筋活動を調べた報告では、図3の赤枠から青枠までの動作で長内転筋、薄筋、大内転筋に高い筋活動が示されていて、体幹の回転運動を生み出す作用があると考えられています。8)

野球スポーツ障害  野球肘 「上腕骨(じょうわんこつ)内側上顆裂離(ないそくじょうかれつり)(肘内側障害)」

図3:投球動作

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図5:肘下がり

 

上記のことから、上腕骨内側上顆裂離(肘内側障害)を防ぐひとつの方法として、投球動作が“肘下がり”

とならないよう、肩甲骨周囲では

・前鋸筋

・菱形筋・

僧帽筋下部

 

股関節周囲では

・大殿筋

・長内転筋

・薄筋

・大内転筋

 

に疲労が溜まり、使いにくい状態になっていないかどうか日常的にチェックすることが予防につながるのではないかと考えます。また、自分のからだの状態をきちんと把握するために、セルフチェック(図4)を行い、少しでも違和感がある場合には、早めに専門の医療機関を受診してください。

 

引用文献および論文、Webサイト

1)馬見塚尚孝:新版野球医学の教科書,p274.2019,株式会社ベースボール・マガジン社

2)峯博子,萩本晋作ほか:成長期野球競技者における上腕骨内側上顆下端裂離の病態.整形外科と労災外科64:(1)p102-105,2015

3)https://nishiokadaiichi.or.jp/nekkyu9/2014%E5%B9%B46%E6%9C%88%E5%8F%B7%E3%80%80%E3%80%8C%E8%82%98
%E3%81%AE%E6%8A%95%E7%90%83%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%80%8D-%EF%BD%9E%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E8%82%98%E3%81%A8/

4)https://www.sapporo-sports-clinic.jp/disease/157/

5)https://medicalnote.jp/diseases/%E5%89%A5%E9%9B%A2%E9%AA%A8%E6%8A%98(一部改変)

6)陶山哲夫:改訂第2版 スポーツ理学療法学 動作に基づく外傷・障害の理解と評価・治療の進め方,p210.2019,株式会社メジカルビュー社

7)青木治人ほか:スポーツリハビリテーションの臨床,p350.2019,株式会社メディカル・サイエンス・

インターナショナル(一部改変)

8)青木治人ほか:スポーツリハビリテーションの臨床,p349.2019,株式会社メディカル・サイエンス・

インターナショナル(一部改変)

 

図の引用

図1:https://nishiokadaiichi.or.jp/nekkyu9/2014%E5%B9%B46%E6%9C%88%E5%8F%B7%E3%80%80%E3%80%8C%E8%82%98
%E3%81%AE%E6%8A%95%E7%90%83%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%80%8D-%EF%BD%9E%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%E8%82%98%E3%81%A8/

図2:https://www.sapporo-sports-clinic.jp/disease/157/(一部改変)

図3:陶山哲夫:改訂第2版 スポーツ理学療法学 動作に基づく外傷・障害の理解と評価・治療の進方,p210.2019,株式会社メジカルビュー社

図4:馬見塚尚孝:新版野球医学の教科書,p57.2019,株式会社ベースボール・マガジン社

図5:青木治人ほか:スポーツリハビリテーションの臨床,p351.2019,株式会社メディカル・サイエンス・

インターナショナル

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