バスケットボールスポーツ外傷 足関節捻挫

バスケットボールスポーツ外傷 足関節捻挫

概要

バスケットボールに多い外傷(=外から加わった一度の強い衝撃で発生するもの)の1つとして足関節捻挫があります。捻挫とは、関節に本体の運動とは異なる強い力が外から加わり、関節を支えている靭帯(じんたい)や関節包(かんせつほう)が損傷した状態のことをいいます。この捻挫が足関節に生じたものを足関節捻挫といいます。

今回は、この足関節捻挫について

1.足関節捻挫の種類

2.足関節捻挫で損傷しやすい靭帯

3.捻挫なのになぜX線検査をするのか

4.足関節捻挫の症状

5.足関節捻挫の対処方法

6.PRICES処置とは

という6つの項目について書いてみようと思います。

 

 

1.足関節捻挫の種類

 

足関節捻挫の種類には、どのような運動方向に外からの力が加わったかで分類する方法と、足関節の靭帯(じんたい)がどの程度、損傷されたかで分類する方法があります。まず、運動方向による分類ですが、これには内反捻挫と外反捻挫の2種類があります。

内反捻挫は図1のように足の裏が内側に向くような状態で受傷した場合をいい、外反捻挫は図2のように足の裏が外側を向くような状態で受傷した場合のことをいいます。足関節捻挫の発生率は内反捻挫で70~77%、外反捻挫5~14%1)という報告結果があり、足関節の構造上の特徴からも足関節では内反捻挫が起きやすいと言われています。

 

次に靭帯(じんたい)の損傷の程度から見た分類についてですが、これにはⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度と靭帯の損傷の程度により、3段階に分けられています。

Ⅰ度:前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の部分損傷

Ⅱ度:前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の断裂

Ⅲ度:前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)と踵腓靭帯(しょうひじんたい)の断裂

 

 

2.足関節内反捻挫で損傷しやすい靭帯(じんたい)

 

足関節内反捻挫で損傷しやすい靭帯(じんたい)は

①前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)

②踵腓靭帯(しょうひじんたい)

③後距腓靭帯(こうきょひじんたい)

 

の3つの靭帯(じんたい)が損傷しやすいと言われています。中でも前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)が足関節内反捻挫で最も損傷しやすい靭帯(じんたい)と言われています。その理由として

①外果(がいか)と比較して内果(ないか)の長さが構造上短く、不安定であること

②内果(ないか)に付いている前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)と踵腓靭帯(しょうひじんたい)の靭帯(じんたい)そのものの強度を測定した結果、前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の強度が低いこと

③足関節底屈位(ていくつい)では、前距腓靭帯は緊張している状態であるのに対し踵腓靭帯(しょうひじんたい)は若干、緩んだ状態であること

 

このような理由により足関節内反捻挫では前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)が損傷しやすいと

考えられています1)バスケットボールスポーツ外傷 足関節捻挫

図3:足関節外側にある靭帯(じんたい)

 

 

3.捻挫なのになぜX線検査をするのか

 

捻挫をして病院に行くと、X線検査(=レントゲン撮影)をしましょう。と言われた経験はありませんか。捻挫なのになぜX線検査をするのか。それはX線検査を実施して骨折の有無を確認するためです。

“X線検査は、X線を人体に照射し、各組織を通過してきたX線の量の違いを画像として表示する検査です。空気などのX線が通過しやすい部分は黒く、骨などのX線が通過しにくい部分は白く写し出されます3)“。

原因

4.足関節内反捻挫の症状

 

足関節捻挫は前に述べたように多くは内反捻挫です。そのため、足首の外側にある靭帯(じんたい)、前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)が損傷されることが多く、外側のくるぶしの前や下に痛みや腫れがみられます。また外くるぶしの前や下を押さえると痛みがあります。

前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の損傷により、足関節の安定性は低下しますが、それによって歩けなくなることはありません。

受傷後に体重がかけられない、腫れが強い、皮下出血がみられるなどの症状がある場合には関節面の軟骨損傷や骨折の疑いがあるため注意が必要です。

予防と治療

5.足関節捻挫の対処方法

 

足関節捻挫の対処方法で大切なことは適切な応急処置をして、内出血や腫れ、痛みを抑えることです。

その応急処置の基本となる考え方にPRICES(プライシス)処置というものがあります。PRICES(プライシス)処置とは以前からある応急処置の考え方のRICE(ライス)処置である、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの要素に新たにProtect(保護)とStabilization/Support(安定/固定)の2つを加えた6つの要素からなる応急処置の新しい考え方のことです。

内出血や腫れ等は、体を良好な状態に回復させるために必要な反応ですが、過度な内出血や腫れ等は逆にマイナスになることもあります。そこで受傷後できるだけ早期にPRICES(プライシス)処置を行い3)組織の回復を促すとともに、できるだけ早期に医療機関を受診することをおすすめします。

バスケットボールスポーツ外傷 足関節捻挫

図8:皮下出血

 

 

6.PRICES(プライシス)処置3)とは

 

PRICES処置についてそれぞれの要素の意味と目的、注意点を表にまとめています。

 

 
目的 注意点
 

P=Protect

(保護

 

【安全確保】

真っ先に行うことはケガをしている人の保護やケガをしている部位の保護に努めます。

スポーツ中にグラウンドやコートの中で負傷した場合、十分に注意を払いながら速やかに安全な場所に移動させます。

 

ケガをした部位によってはケガをした人を移動させることが困難な場合もあります。そのときには、無理にケガをした人を動かすのではなく、できる限りケガをした人の周りの環境を安全に保つよう努めます。

 

R=Rest

(安静/スポーツ活動の停止)

 

【内出血や腫れ、痛みの抑制】

【損傷部位拡大の防止】

内出血や腫れがひどくなると回復に時間がかかったり、再発リスクが高まったりするため、スポーツをしているときにケガをした場合にはすぐに運動をやめて安静にさせます。

 

過度の安静は筋力の低下や関節可動域の低下につながるため、専門家の指導の下、痛みの出ない範囲でできるだけ早期に動かすことも必要です。

 

I=Ice

(冷却)

 

【内出血や腫れ、痛みの抑制】

【筋肉の緊張の緩和】

【患部代謝低下による炎症の抑制】

ビニール袋やアイスバッグに氷と水を約1:1の割合で入れ、中の空気を抜いたものをできるだけ患部に密着するようにして冷やします。

ケガをしている部分の感覚が「冷たい」→「痛い」→「温かい」→「ぴりぴりしびれる」→「無感覚になる」という段階で変化していきます(時間にして約15~20分程度)ので、無感覚になったら冷却を中止して、アイスバッグを外し、50分~60分程度休憩したのち、再開します。

この冷却→休憩→冷却→休憩・・・のサイクルを24時間~72時間ほど

続けます。

 

無感覚状態になってさらにアイシングを続けると凍傷の危険性があるだけでなく、回復が遅れる原因になります。

また、就寝時のアイシングは凍傷の恐れがあるため避けましょう。

 

C=Compression

(圧迫)

 

【内出血や腫れの抑制】

圧迫はケガの直後から行うことが理想的です。表面的に傷や内出血が確認できなくても見えないところでは組織がダメージを受けて炎症が起きています。

損傷した部分の炎症は修復過程において必要な過程ですが、過度な場合には適切な回復が行われず、組織自体がもろくなってしまいます。

この状態を防ぐために患部を適度に圧迫する必要があります。

 

圧迫が強すぎると神経を圧迫したり、圧迫している部分から末梢の部分の血流が悪くなったりすることがあります。

圧迫している部分より末梢の部分が青白くなったり、痺れを感じたりしたときには、一度圧迫するのを止めます。

血流や痺れが改善したら再度、適度な強さで圧迫します。

 

E=Elevation

(挙上)

 

【内出血や腫れの抑制】

ケガをした部分を心臓より高い位置に保つことで、患部の血圧を下げます。

患部の血圧が低いと血管の外に出ていく血液の量が抑えられ、過度な内出血を抑える効果が期待できます。

さらにアイシング、圧迫と併用することで、内出血の抑制を効率的に行うことができます。

 

足をクッションや椅子などにのせて横になり、安静な姿勢を保ちましょう。

 

S=Stabilization/Support

(安定・固定)

【痛み・腫れ・炎症の抑制】

【組織回復期の初期において有効】

ケガをした部分を固定して安定に保つことで、筋肉、腱、靭帯などの修復が効果的に行われる効果が期待できます。

 

必要以上の長い期間の固定は関節可動域の低下、筋力の低下、骨萎縮などを起こす可能性があるため、専門家の指導の下固定を行う必要があります。

 

最後になりましたが、この記事がスポーツをがんばっている子どもさんや、それを支える保護者の方にとって

少しでもお役に立てる情報となっていればうれしいです。

 

参考文献およびURL

1)福林徹ほか:足関節捻挫予防プログラムの科学的基礎.P44,有限会社ナップ,2011

2)単純X線検査|筑波メディカルセンター (tmch.or.jp)

3) プライシス処置 | 鹿児島市のみずほ整骨院 りぼでぃあ (mizuho-seikotsu.com)

 

図の引用

図1:足関節捻挫 (kic-ssc.com)

図2:外反捻挫(ネンザ) – McDavid|サポータ-ブランドのマクダビッド オフィシャルサイト

図3:足関節捻挫 (kic-ssc.com)

図4、図5:足の捻挫(ねんざ)とその後遺症について – 社会医療法人松田整形外科記念病院 (matsuda-oh.com)

図6:川越市若葉 会社員 足首の痛み 外果骨折 Blog 鶴ヶ島市、坂戸市、川越市で痛み、しびれ、交通事故によるむち打ち等の治療はふじみ接骨院 (223sekkotsu.com)

図7:2010年最難関手術 ベスト4 ラグビー選手足関節脱臼骨折後のclaw toe変形を一刀両断 : スポーツ整形外科医S. Uのブログ Sports Physician S.U Blog (livedoor.jp)

図8: 足関節捻挫 (kic-ssc.com)

 

坂東佳代

この記事を書いた人: 坂東佳代

学校教員時代体育、部活指導を通して、ケガ故障する前にできることはないかと調べるうちにアロマに出会う。公益社団資格、アスリートアロマ資格を取得し、大学運動部サポートなど活躍の場を広げる。2児の母。

■理学療法士
■AEAJ認定アロマセラピーインストラクター/アロマセラピスト
■CaRA認定アスリートアロマトレーナー
■中学校保健体育科第一種免許
■高等学校保健体育科第一種免許

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