テニスにおいて手首は非常に大切な部位であり外傷(=外から加わった一度の強い衝撃で発生するもの)が多い箇所でもあります。今回ご紹介する腱鞘炎は特に手首に注目してご紹介しますが、テニスなどのスポーツだけでなく日常生活でも起こりうる外傷の一つです。
腱鞘炎は基本的には特定の箇所において炎症が起きている状態をいいます。
今回は、この腱鞘炎について
1.腱鞘炎(手首)の種類
2.テニスで腱鞘炎になりやすい部位
3.腱鞘炎(手首)の原因
4.腱鞘炎(手首)の症状
5.腱鞘炎(手首)の対処方法
という5つの項目について書いてみようと思います。
手・手首での腱鞘炎を考えた場合、大きく2種類あり、ドケルバン症かCM関節症が考えられます。
これらはいずれも手の親指側から手首にかけて痛みを伴う外傷です。
ドケルバン病とは、図1にある①短母指伸筋腱や②長母指外転筋腱、③腱鞘のいずれか、もしくは全てが炎症を起こしている状態です。(図1)
これに対し、CM関節症とは親指と手首の間にある小さい関節のことで、この小さな関節が何らかの原因で炎症を起こしている状態です。(図2)
図1
図2
上記で腱鞘炎の種類を説明した通り、腱鞘炎は基本的に手首の「親指側」で発症していることがおいです。
それはラケットを握る時に親指だけがそのほかの指とは異なる指の添え方になり、力の加え方や方向や異なるため強いボールを打つ際の衝撃を支えたりする場面において最も疲弊しやすい箇所になるからです。
ドケルバン症
基本的にはオーバーユース(使いすぎ)による発症が多いです。
また、腱鞘炎は男性よりも女性の方が発症率が高いです。これはホルモンバランスの乱れによって腱鞘炎を発症する可能性もあるからです。
腱とはエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの働きによって動きを滑らかにするなど働きがありますが、ホルモンバランスが乱れるとこのエストロゲンが十分な働きを行うことができずに炎症を起こしてします可能性があるのです。
図3
CM関節症
こちらにおいても、基本的にはオーバーユース(使いすぎ)による発症が多いです。
現象としては親指の付け根のCM関節にある軟骨がすり減って、痛みや変形が生じている状態です。
使いすぎに以外では加齢などによって徐々に減少する場合が多く、握るように力を入れるたびに痛みが発生したり、酷い場合には手の形が変形してしまうケースもあります。
図4
ドケルバン症
親指を動かしたり(広げたり)、力を入れたりすると、親指側の手首が痛い。
親指側の手首あたりが腫れる。酷くなると、力が入らなくなる。と言った症状があります。
CM関節症
だるい痛みから始まり、軟骨のすり減りが進んでいくと、ズキッとした強い痛みが出るようになります。軟骨のすり減りによるものなので一定の動作を行うたびに慢性的に痛みが発生してしまう可能性があります。
具体的に痛みが発生しやすい動作としては
・ 物をつまむ時、瓶のふたを開ける時など親指に力を入れる動作で痛みを感じる
・ 親指が開きにくく、親指の付け根あたりが膨らんでいる
などがあります。 進行してくると、親指の指先の関節が曲がり、付け根側の関節が反った「白鳥の首変形(スワンネック変形)」や亜脱臼(あるべき場所から部分的にずれ、外れかかっている状態)へと変形してしまうことがあります。
図5
対処方法はどちらも基本的には同じです。(手術の方法は異なりますが)
①保存的治療
治療で一番大事なことは、まずは休ませることです。まずは安静にして、湿布などで炎症を抑えてあげることで軽症であれば、ほとんどのケースで痛みや腫れなどの症状が改善します。
どんな場合においても、痛みがでた場合はまずは安静にして経過を見る。特に固定させるなどすることでより安全に負荷をかけず生活ができるでしょう。
②ステロイド注射トリアムシノロン
痛みや腫れが強く、仕事や日常生活に支障を来す場合や、投薬治療などを行っても改善が見られない場合には、腫れている腱鞘にステロイド注射(局所麻酔入り)を投与して、炎症・腫れ・痛みを押さえます。
③手術
最悪の場合には力が入らないなど腱鞘の炎症が重症化している場合や、再発を繰り返している場合には、手術が適応されます。
局所麻酔による日帰り手術(所要時間:15分~30分程度)が可能なようですが、大事な知覚神経がそばを通っているので、経験豊富な整形外科医による執刀してもらうことをお勧めしております。
図6
参考文献
2)【手首・指】なかなか治らない腱鞘炎の原因と治療方法|小川整骨院
図の引用
図1.2:いしがみ整形外科クリニック
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